パソコンでカタカタと文章を打っているとき、ふと手が止まる。なぜか文章が浮かんでこない。入力した内容に違和感がある……。そんな経験はないだろうか?
その原因は「パソコンで文章を書くのはクリエイティブ(創造的)な作業ではない」からだ。
その“真実”を知れば、おのずと解決策も見えてくる。
この記事を読めば、パソコンの前でウーンと頭を抱えることは、もうなくなるはずだ。
この記事の内容
手が止まるのは〈ゴールイメージ〉に問題がある
パソコンで文章を書いているときに手が止まる。その原因は〈ゴールイメージ〉にある。
〈書くべきこと〉がわかっていない
〈ゴールイメージ〉をもう少し噛みくだいて表現するなら、〈構成〉や〈ストラクチャー〉〈プロット〉といったコトバに言いかえられる。より具体的にいえば、「タイトルや見出し・小見出し」。ようするに〈書くべきこと〉だ。
つまり、〈書くべきこと〉を事前に考えておかず、いきなり文章を打ちはじめるから、途中で行きづまってしまうわけだ。
もっとも、そんな愚を犯すのは、駆け出しのライターか、新入社員ぐらいかもしれない。
かなり手慣れた人でもついハマってしまいがちな“罠”は、〈ゴールイメージ〉が不完全なままライティングに着手してしまうことだ。
たとえば、しっかり〈ゴールイメージ〉をつくったつもりだったが、手抜かりがあった。それに気づかず発進してしまった。そのため、途中で流れが渋滞してしまうのだ。
また、〈ゴールイメージ〉に論理的な穴はないし、流れもスムーズだが、なんだか書いていておもしろくない。読むほうも退屈するだろうな。もっと効果的な展開のしかたがあるのでは? いま書いているものはムダになるような気がする……などと考えて手が進まないこともある。これもあるていど書き慣れた人が犯しがちなミスだ。
〈ゴールイメージ〉をパソコンでつくってはいけない
〈ゴールイメージ〉を最初からつくっていないのは論外としても、しっかり〈ゴールイメージ〉を準備していたはずなのに、そこに不備があったのはなぜだろうか?
それは〈ゴールイメージ〉をパソコンでつくっているからだ。
たとえば、Webライティングで、クライアントに〈ゴールイメージ〉(いわゆる「構成」)を提出するケース。頭のなかで考えたタイトルや見出しをExcelにそのまま入力する。リサーチもパソコンで行なう。作業はパソコンだけで完結してしまう。
最終的にコンテンツとしての体裁は整うかもしれない。クライアントから文句を言われることもないだろう。
しかし、それでは真に価値のあるコンテンツはつくれないのではないか? という疑問も拭いきれない。
なぜならば、パソコンでは〈クリエイティビティ(創造力)〉が発揮されないからだ。
〈クリエイティビティ〉とは、ゼロからなにかを創り出す力だ。
既存の情報をかき集めたようなコンテンツをつくるなら有効かもしれない。しかし、真の価値を持つのは、ほかには存在しない情報が載っているコンテンツだ。それは〈クリエイティビティ〉を発揮しなければつくれない。
「真の価値を持つコンテンツ」をつくるなら、パソコンだけで完結させるのは得策ではない。
〈クリエイティビティ〉は紙とペンで発揮される
では、どうすればいいのか? 「パソコンは現代のビジネスには必須のツールだぞ。それを捨てろというのか!」。頭のなかでそんなツッコミを入れているかもしれない。解決策はこうだ。
〈紙とペン〉はクリエイターの道具だ
〈ゴールイメージ〉を〈紙とペン〉でつくる。それこそが有効な解決策となる。なぜならば、〈クリエイティビティ〉は〈紙とペン〉を使ってこそ最大限発揮されるからだ。
以前、ミュージシャンの小西康陽さんにインタビューしたことがある。お話を聴くまでは、楽器やキーボード、パソコンといった機器だけを用いて作曲をしていると想像していた。ところが、意外にもアイデアを出したり構想を練ったりするのは、ノートの上で行なっているという。〈紙とペン〉で〈ゴールイメージ〉をしっかりつくってから楽器に向かっているわけだ。
〈紙とペン〉こそ、クリエイターの道具である。それをこのとき確信した。
もちろん、ミュージシャンがみなノートを使っているわけではないだろう。クリエイターそれぞれに独自のやりかたがあるはず。
それでも、アイデア出しや構想の段階では〈紙とペン〉を活用するクリエイターは多いように思う。たとえば、下記の記事が参考になる。
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「そもそもライターってクリエイターなの?」と疑問に思うかもしれない。たしかに、意見は分かれそうだ。しかし、ここでは「真の価値を持つコンテンツをつくるためには、ライターもクリエイターであるべきだ」と主張したい。
〈紙とペン〉で発揮される創造力とは?
なぜ〈紙とペン〉を使うと〈クリエイティビティ〉が発揮されるのか? 脳科学的な根拠もありそうだが、それは専門外なので自分の経験則から述べよう。
たとえば、インタビューを行なう際には〈紙とペン〉でメモをとることをおすすめしている。
文章を書く際に〈紙とペン〉を使うメリットは、おもに以下の3つだ。
[1]脳がフル回転する
上記の記事でも述べたように、手を動かすと脳はフル回転する。
パソコンで作業をしているときも、もちろん脳はそれなりに働いてはいる。だが、〈紙とペン〉より“回転数”は落ちる印象がある。
のちに述べるように、パソコンだけで作業をしていると、どうしても行きづまる。そんなときは、いったんパソコンを閉じ、〈紙とペン〉に切りかえると突破口が見つかる。
[2]全体を俯瞰できる
パソコンの画面と紙面。両者をくらべると、紙面は全体を俯瞰できる点にアドバンテージがある。この利点は〈ゴールイメージ〉の論理的な流れを検証するのにおおいに役立つ。[1]で挙げた「脳がフル回転」していることも関係している。脳がしっかり働いているから、論理的な思考力が(批判的な視点を持って)機能する。
逆にいえば、パソコンだけで〈ゴールイメージ〉をつくってしまうと、論理の穴を見逃すから、のちのライティングが停滞してしまうわけだ。
[3]思考を抽象化できる
〈紙とペン〉なら、図や矢印を自由に描きこめる。これもパソコンにはないメリットだ。なるほど、パソコンでペンタブレットなどを用いれば、おなじようなことはできる。しかし、「できないこともない」だけであって、〈紙とペン〉とくらべて大きな利点はないように思う。
図や矢印を描きこむことで思考を抽象化できる。断片的な考えを線や丸で囲ったり、位置を動かしたりして、思考を熟成させていく。そこから、新たなアイデアが生まれることもある。
記事をおもしろくするアイデア、もっとわかりやすい説明のしかたなどは、思考を熟成させることで見つけられる。
パソコンを開く前に〈紙とペン〉を用意する
〈紙とペン〉のメリットが理解できたら、やるべきことは明白だ。パソコンを起動させる前に、〈紙とペン〉を用意し〈ゴールイメージ〉をつくるのだ。
具体的には、タイトルや見出し・小見出しは〈紙〉に書き出していく。可能なら、本文の内容も箇条書きしておく。
書きおわったら全体を俯瞰して、論理的な矛盾はないか、説明の流れはわかりやすいか、もっと別のアイデアは入れられないか、といったことを検証していく。
「よし、これでOK!」と自分で納得して初めてパソコンを起動させる。ライティングを始めたり、クライアントに提出するExcelに入力したりするわけだ。
ライティングの途中で〈紙とペン〉を取り出す
また、〈紙とペン〉を使うのはライティングの前だけでなく、途中で手が止まったときにも有効だ。手が止まる理由は、前述のとおり〈ゴールイメージ〉に不備があることだから、ふたたび〈紙とペン〉を手にとり、タイトルや見出しをなどを書き出して、手抜かりがないか点検していくのだ。
脳がフル回転し始め、批判的な視点も働き、突破口となるアイデアが浮かんでくるはずだ。
場合によっては、文章を最初から書きなおすハメになるかもしれない。だが、パソコンの前でただうなっているだけの時間を考えると、遠回りになっても結果的に早くゴールにたどりつく可能性が高い。
パソコンの真価を発揮させる方法
「そんなに〈紙とペン〉が好きなら、文章もすべて手書きすればいいじゃないか!」。意地の悪い想いが浮かんできたかもしれない。
そんな意地悪もじつは示唆に富んでいる。実際、〈ゴールイメージ〉をしっかりつくっておくと、1500字ぐらいの文章なら手書きしてしまったほうが早かったりする。
パソコンの使いどころは〈効率化〉
もちろん、現代のワークフローでは、手書きの文章をそのまま活用することはできない(自分が著名な大作家先生なら、原稿用紙に手書きして入稿するのも許されるかもしれないが)。文章はパソコンで入力しデジタル化する必要がある。ただ、そこでは〈クリエイティビティ〉は発揮されない。
この考えを発展させていくと、「パソコンで文章を書くのはクリエイティブ(創造的)な作業ではない」という“真実”に行きつく。
パソコンで文章を書くのは、創造性が発揮されない作業、たとえば〈雑巾がけ〉などとおなじようなものなのだ。
これを逆に考えると「創造的でないからこそ効率化できる」ともいえる。書いた文章をデジタル化して入稿するのも効率化のひとつだ。
プロとして生産性をアップする
ここまできて、パソコンと〈紙とペン〉のそれぞれの使いどころが見えてくる。創造力を最大限発揮する必要のある〈ゴールイメージ〉づくりは〈紙とペン〉を使う。効率化が必要なライティングにはパソコンを使う。
こうすることで、生産性は最大限高まるわけだ。
短時間で高品質のコンテンツをつくるには、パフォーマンスを上げていかなければならない。それがプロフェッショナルだ。
つまり、パソコンだけでなく、〈紙とペン〉をしっかり使ってこそプロのライターといえるのだ。
今日からぜひ〈紙とペン〉を仕事の道具に加えよう。
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