「インタビューでは、どんな質問をしたらいいの?」
これは、インタビューに臨むライターが頭を悩ませることのひとつだ。
インタビューの際、どんなことを相手に聴けばよいかは、〈ページの完成イメージ〉から自然に導き出せる(というより、導き出さなければならない)というのが持論だが、ここでは視点を変えて、「質問項目に悩んだときに使える小技」のようなものを考えてみる。
それは、相手の〈過去・現在・未来〉を聴くというものだ。
インタビュー記事で「サービスを使ってみたい」と思わせる
例を挙げよう。
あるウェブサービスを紹介する企画で、その開発者にインタビューするケースを想定すれば、以下のような質問になる。
〈過去〉サービスを開発した理由や経緯をお聞かせください。
〈現在〉サービスの概要や特徴を教えてください。
〈未来〉サービスがこれからどのように発展していくのか、展望はありますか?
ここではかりに「温泉宿を手軽に予約できるウェブサービス」の開発者にインタビューする場合を考える。
〈過去〉の質問として「このサービスを開発した理由は?」と聞けば、「温泉宿に特化した予約サイトがそれまでなかったから」といった答えが返ってくるだろう。
〈現在〉として「このサービスの特徴は?」と質問すれば、「さまざまな旅行会社の宿泊プランを比較しながら予約ができる」といった答えになるだろう。
〈未来〉として「今後の展望は?」と尋ねれば、「地図上のマークをタップするだけで、予約ページに飛べるようにしたい」と話してくれるかもしれない。
では、なぜ〈過去・現在・未来〉を質問するのがよいのか?
その答えは、「インタビューの目的は何か」にある。表面的には「サービスを紹介する」ことが目的だが、裏には「読んだ人にそのサービスを使ってもらう」ひいては「会社に利益をもたらす」という思惑がある。これこそがインタビューの真の目的であり、開発者がインタビューに応じる理由になるわけだ。
その観点から考えると、〈過去・現在・未来〉を質問するメリットは次のようになる。
まずは、アットランダムに質問するよりも時系列に聞いたほうが、サービスの魅力を漏れなく紹介できる。次に、〈過去・現在・未来〉と文章が展開することで、読み手も理解しやすい記事になる。
3番目の理由は、〈過去〉の質問に対する答えにはユーザーの悩みや課題が、〈現在〉にはその解決策が含まれていることだ。
上の例でいえば、「温泉宿を探したいのに便利な予約サイトがない」のが〈過去〉のユーザーの悩みであり、それを解決するのが〈現在〉のサービスの内容になる。
そして、ここからが重要なのだが、「温泉宿を探したいのに便利な予約サイトがない」という〈過去〉のユーザーの悩みは、その記事を読んでいる人がまさに解決したいと思っている課題である可能性が高く、記事で紹介しているサービスがその解決策になっているということ。
つまり、インタビュー記事を読んだ人に「サービスを使ってみたい」と思わせることができるのだ。
これが、〈過去・現在・未来〉を質問するメリットというわけだ。
インタビューで「学校に行きたい」気持ちにさせる
さらに、別の例で考えてみよう。
専門学校の生徒さんにインタビューするケース。この場合も〈過去・現在・未来〉を質問する。下のようになるだろう。
〈過去〉なぜこの学校を選んだの?
〈現在〉いまどんな勉強をしているのか。とくに楽しいと思う授業は?
〈未来〉将来、どんなふうに社会で活躍したい?
生徒さんは、学校を選んだ理由は「ハイレベルの技術を学びたかったから」、いま学校でやっている勉強は「実際の美容院でお客さんを相手にテクニックを実践しているのが楽しい」、将来は「英会話教室に通って海外で活躍したい」などと答えるだろう。
〈過去〉の「ハイレベルの技術を学びたい」というのがユーザーの悩みであり、〈現在〉の「実際の美容院でお客さん相手にテクニックを実践している」のがその解決策(のひとつ)になる。
美容学校はあちこちにあるけれど、「ハイレベルの技術を学べる学校がなかなかない」。このインタビューは、そんな悩みを抱える読み手に届けるべき記事ということになる。
記事を読んだ人は「この学校に入ってみたい」、そこまでいかなくても「ちょっとこの学校のことを調べてみよう」、少なくともそんな気にはさせるだろう。
それは、この記事のクライアント(ここでは専門学校)に大きな利益をもたらすはずだ。
〈未来〉には現在の問題点が隠されている
最後に、〈未来〉の質問について考える。
サービスの開発者が語る〈未来〉に対して、読み手が魅力的な展望を描ければ、それは当然サービスの宣伝になる。したがって、〈未来〉を質問することには大きな意義がある。
それに加えて、(じつはデリケートな部分でもあるが)インタビューの相手が語る〈未来〉には、現状の問題点が隠されていることがあるのだ。
上のサービス紹介の例でいえば、「地図上のマークをタップするだけで、予約ページに飛べるようにしたい」のは、逆にいえば現状はそうなっていないことを意味する。「英会話教室に通って海外で活躍したい」という答えには、「いま学校は英語力の強化にあまり力を入れていない」という問題点が浮かびあがる。
これらは、インタビューに応じてくれた人(および所属する会社や学校)にとって不利益な情報だから、記事には書けないかもしれない(書いたとしても、削除するよう頼まれるだろう)。「デリケート」と言ったのはそのためだ。
逆に、ユーザーからクレームを受けるのを避けるため、あえて不利益な情報(ユーザーにとっては参考になる情報)を書くという考え方もあるので、記事の内容によって判断していく。
今回は例として、ウェブサービスの開発者や専門学校の生徒さんにインタビューするケースを紹介したが、〈過去・現在・未来〉を聞くことは、あらゆるジャンルの相手に有効だ。
「インタビューでは、どんなことを聞けばいいの?」。悩んだときは、この〈過去・現在・未来〉の質問を思い出したい。
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