中華料理屋がつくるチャーハンは〈案件〉なのか

「いま難しい案件に取りくんでいます」

「いい案件にめぐりあえた」

などと、巷のライターさんたちが自分の仕事を〈案件〉と呼んでいる。近ごろそれが気になっているんだ。日本語としておかしいから? いや、コトバの使いかたはまちがっていない。

たとえば、弁護士や経営コンサルタントならいい。会社勤めの人が上司から頼まれたことを〈案件〉と言うのもよさそうだ。なぜかライターが使うのには抵抗がある。不思議だ。

〈案件〉には、「解決すべき問題」という意味合いが含まれていると思う。弁護士やコンサルタントは、まさに問題を解決するのが仕事だから、〈案件〉がなじむ。

では、反対に〈案件〉がふさわしくない仕事はほかにあるか? たとえば中華料理屋。「チャーハンひとつ」という注文に応えることは、はたして問題解決なのか。

キミは「客の空腹という問題を解決しているぞ」と考えるかもしれない。でも、ボクの感覚ではそんなチャーハンは不味そう。味は二の次という感じがする。

ライターの仕事は、中華料理屋のように“美味しい文章”を読み手に与えること。ボクはそう思っているから、ライターの〈案件〉に違和感をおぼえるんだろう。


Gyahun工房がつくるZINE『Gyahun(ぎゃふん)』

この記事は、『Gyahun⑭ コトバ放浪記』に掲載された内容を再構成したものです。

もし『Gyahun(ぎゃふん)』にご興味をお持ちになりましたら、ぜひオフィシャル・サイトをご覧ください。

関連記事

  1. 手書きと録音

    インタビューのメモは〈手書き〉〈録音〉どっちがいい?

  2. 〈自分へのご褒美〉は、いま目の前にある幸せを意識する

  3. 有名人へインタビュー

    有名人へのインタビューはそれほど難しくない

  4. 〈自然に〉と〈自然と〉はどっちでもいい?

  5. 〈仕事の効率化〉とはいうけれど、非効率なことにも価値はあるかもしれない…

  6. 聴くために書く

    インタビューで話を〈聴く〉には〈書く〉しかない

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


このブログは…?

フリーライターのユニット〈Gyahun工房〉がこれまでの経験から得た知見、日ごろ考えていることなどを語っていきます。

特集

アーカイブ