実際の取材メモを使って記事を作成
生成AIのClaude 3(クロード3)がChatGPTを凌駕すると話題になっていたので、私もその腕前を試させてもらいましょう。
今回は、私の趣味のブログにインタビュー記事を書いていただきます。具体的には、数年前にインタビューを行なった際に書いたメモがあるので、それをもとにClaude 3(無料版)に記事を作成していただく。なお、取材メモは厳密にいえば、現場で手書きし自宅にもどってワープロソフトで整えたものです。当時、私もこのメモを見ながら記事を書きました。
下記は、「取材メモの現物*注1」「AI(Claude 3)の書いた記事*注2」「人間(私)の書いた記事」へのリンクです。なにかの参考にしていただければ幸いです。
*注1:リンク先はPDFですが、Claude 3がPDFを読んでくれなかったので、実際はPDFをテキストデータに変換したファイルを使っています。*注2:「AIの書いた記事」は、Claude 3が出力したテキストを、人間(私)がWordPressに入力して作成したものです。その際、見出しを設定したり画像を挿入したりして体裁を整えています。ただし、文章そのものには手を加えていません(見出しもClaude 3が指定したとおりです)。また、インタビュイー(Jini氏)のチェックを経ていない点にもご注意ください。
記事の完成度は高いのに“読みごたえ”がない
Claude 3の文章を一読して、文章の不備や論理的な矛盾などは見られません。つまり、記事として成立してはいます。ただ、この点はChatGPTでZINE(リトルマガジン)をつくったこともあり、驚くには値しませんでした。
今回つかったのは取材メモのみで、いわゆる〈文字起こし〉は読み込ませていません(取材時に音声を録音していなかったので)。したがって、取材メモに存在していない要素はClaude 3が“想像”で書いたものです。〈文字起こし〉を使っていればまたちがった結果になっていたと思われますが、一方で要点のみを抽出したメモだけを用いているからこそ、洗練された内容になっているようにも感じます。
今回おどろかされたのは、まさに「Claude 3が“想像”で書いた」という点です。実際のインタビュー記事の制作では、インタビュイーの語ったことをそのまま載せるケースは少なく、読みやすい表現に直したり言葉を補ったりします。その際、「インタビューのときに言っていなかったけど、たぶん相手はこう考えるだろう」と、インタビュイーの思考や感情を書き手が斟酌して文章を膨らませることもあります。その作業は人間のライターにしかできない(AIには不可能)と思っていたのですが、今回の記事の出来栄えを見て、かならずしもそうではないことがわかりました。
しかしながら——。
自分がメモを作成し、自分でも記事を書いているのに(いや、だからこそ?)、AIの書いた記事には、どことなく“読みにくさ”があります。書かれた内容は理解できるものの、気持ちよく頭に入っていかない。「“読みごたえ”がない」と言い換えてもいいのかもしれません。
その理由はまだ判然としないのですが——そこにライターという仕事の真髄が隠されているのだと思いますが——たしかに要素は論理的かつ整然と並べられてはいます。しかし、ひとつの文、ひとつの段落に情報が詰め込まれすぎている気がします。文章に〈遊び〉がなく、読み手として読むことを強要されているような“圧”を感じる。〈遊び〉とは、「おもしろさ」と「ゆとり/余裕」という意味です。
なぜAIの記事には〈遊び〉がないのか?
個人の趣味のブログとはいえ、私は書き手として「読者に楽しみながら読んでほしい」という想いをこめて書いています。努めて読者の気持ちを意識している。「読者に奉仕する精神(ホスピタリティ)」といえるかもしれません。それが〈遊び〉となって記事に表れているはずなのです。
でも、AIは「奉仕の精神」を持っていない(と思われる)。それが〈遊び〉のなさ、ひいては“読みごたえ”のなさにつながっているのではないでしょうか。
とはいえ、今回は無料版を使ったので、有料版だと結果はちがったかもしれません。私の指示の出し方が的確ではなかったこともありえます。有料版に「〈遊び〉を入れて書いて」「情報を詰め込みすぎないで」などと言えば、“読みごたえ”のある記事が出てくる可能性もあるでしょう。
インタビューの現場に“同席”していないのもClaude3に不利に働いていそうです。近い将来、たとえばAI自身が音声を記録し記事に反映させたりできるようになるかもしれません。
私は“読みごたえ”がないと感じましたが、記事から受ける印象には個人差もありそうです。それに、〈遊び〉がどんな記事にも必要というわけでもないでしょう。
はたしてAIは私たちライターの心強い味方になるのか。それとも強大な敵となって私たちの前に立ちはだかるのか。
なかなか一筋縄ではいかない問題です。今後も追究していきたいと思っています。
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