〈知識のアップデート〉をして世間の価値観を無批判に受けいれよう

おそらく最近になって使われるようになったコトバだと思う。「昔とちがって、いまそんなことしたら炎上します。〈知識のアップデート〉をしてくださいよ」などと表現する。このコトバにも、なんだか違和感をおぼえてしまう。その原因は、おそらくボクのココロの動きにあるのだろう。だから自分の内面を見つめてみる。

〈知識のアップデート〉に悪い意味は含まれていないのに、他人を中傷する文脈で使われることが多い(気がする)。

また、「アップデート」とは、本来はアプリなどに新しいデータを読みこませ、不具合を改善したり機能を追加したりすることだ。つまり、(アプリ側から見ると)受動的な行為になる。したがって、「知識を身につける」といった能動的であるべき行為にはなじまないのだ。

「〈知識のアップデート〉をしてくださいよ」という物言いには、「四の五の言わず、世間の価値観に迎合し、無批判に受けいれなさいよ」という真意が隠されているようにも感じる。発言者に悪意はないかもしれない。けれども、あたかもアプリのような無生物に近い存在になれと強要されているように思えてくるのだ。


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この記事は、『Gyahun⑭ コトバ放浪記』に掲載された内容を再構成したものです。

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