右足と左足を交互に出すことで歩くことができる。
といった表現を目にした。「こと」が重複しているのも気になるが、
右足と左足を交互に出すと歩ける。
でいいのでは? と思ってしまう。
ちょっと気どった文を書こうとすると〈〜することで〉としてしまいがちだ。多くの場合「〜すると」としたほうがズバッと決まる。しかしながら、〈〜することで〉のほうを使いたいときもある。それはどんな場合なのか?
たとえば
このデロリアンに乗ると過去へ行ける。
という文があったとする。この文の前に、
ふつうの車には時間を遡る機能など付いていないが
といった文があるなら
このデロリアンに乗ることで過去へ行ける。
としたほうがよさそうだ。
じつはここでも、ほかの記事で述べた〈天秤理論〉が適用できる。
「〜すると」を〈〜することで〉に変えると“重く”なる。「ふつうの車には時間を遡る機能など付いていないが」と「このデロリアンに乗ることで過去へ行ける」とで文の釣り合いがとれるのだ。
【A】ふつうの車には時間を遡る機能など付いていないが、このデロリアンに乗ると過去へ行ける。
【B】ふつうの車には時間を遡る機能など付いていないが、このデロリアンに乗ることで過去へ行ける。
さらに〈〜することで〉の「〜」部分が強調され、「ほかの車では不可能だが、ブラウン博士のデロリアンなら(過去へ行ける)」といった意味合いも加えられる。
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この記事は、『Gyahun⑭ コトバ放浪記』に掲載された内容を再構成したものです。
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