〈人〉から〈取材〉し価値ある情報を発信する

一次情報こそが良質なコンテンツを構成する

価値あるコンテンツづくりに〈取材〉は欠かせない

雑誌づくりにおいて、〈取材〉は重要なプロセスです。なぜなら、ほんとうに価値のある情報は〈人〉が持っており、その情報を得るには〈人〉から〈材〉を〈取〉る、すなわち〈取材〉をするしかないからです。

もちろん、情報を持つ人自身に記事を書いてもらうケースもあります。しかし、「情報を持つ人」がみんな「情報を正しく伝えられる人」とは限りません。読者の利益にかなうように情報を届けるには、プロフェッショナルの技術が必要なのです。

〈取材〉をするのは簡単ではありません。そもそも自分が持っている情報の価値に当人が気づいていないケースもあります。その人の頭の中に眠る価値ある情報の“原石”を拾い、磨きをかけ、立派な“宝石”へと仕上げることが、雑誌の創り手の役割です。

また、〈取材〉の現場は“一発勝負”の場でもあります。聴くべきことを逃したら、取り返しがつきません。しかも、往々にして現場では事前に予想できないことも起こります。「行ってみないとわからない」。そんな状況も多々あるのです。

〈取材〉における瞬発力と応用力。これらはすぐれたコンテンツづくりには欠かせないスキルといえます。

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ウェブコンテンツも〈人〉から〈材〉を〈取〉り発信する

インタビューのイメージ02

今日のウェブコンテンツには、残念ながら二次情報があふれています。すでに新聞や雑誌、書籍、あるいはほかのウェブサイトに載っている情報を切り貼りし、別のコンテンツとして仕立てたものが多いのです。実際、そういうコンテンツにアクセスが集まるため、メディア側にはメリットがあり、いまも量産されつづけています。

しかし、今後は二次情報の切り貼りでコンテンツをつくる手法は通用しなくなっていくでしょう。当然ながら、二次情報は一次情報よりも価値は下がるからです。そのことにユーザーも気づきはじめています。ユーザーがコンテンツから離れていくのは時間の問題です。

したがって、これから価値のあるコンテンツをつくろうとするならば、〈人〉に〈取材〉をすることがますます重要になっていきます。一次情報はつねに〈人〉からしか得られないからです。

〈取材〉といっても、その相手は有名人・著名人とはかぎりません。ふつうの会社で働くビジネスパーソン、スタートアップ企業の若き社長、町の片隅にある工場で腕をふるう職人。新時代は、いわば“市井の人”こそが、ユーザーにとって真に価値のある情報を握っていることも十分に考えられます。オウンドメディアなら、まさに自社の従業員に〈取材〉をすることがもっとも有効であるケースもありうるのです。

価値ある情報の“原石”は、身近なところに転がっている——。新時代のコンテンツづくりのヒントは、まさに自分たちの身のまわりに眠っているのです。

私の〈取材〉体験談

コンテンツの創り手にとって〈取材〉の醍醐味とは、“未知との遭遇”。仕事でなければ絶対に入手できない情報を得たり、プライベートでは不可能な体験をしたりできることです。

これまで想い出に残る“未知との遭遇”はたくさんありますが、そのうちのひとつに「一流ホテルのスイートルーム」の〈取材〉があります。ホテルの窓から眺める夜景に関する特集でした。ホテルの一室なのに日本の家一軒ぶんより広さがある。和洋折衷の装飾が異空間を演出。調度品も高級感を漂わせます。

一泊いくらかかるのか? ——残念ながら料金をお聞きするタイミングを逃してしまいましたが(怖くて聞けませんでした[笑])、今後の人生でこんな部屋に泊まることはあるのか? 絶対とはいわないまでも、まあ望みは薄いだろうな、などと考えたりしました。

それは読者もおなじはず。自分が現場で抱いたキモチを誌面に反映することで、読者の利益にかなう記事に仕上がったと自負しています。コンテンツの創り手と受け手の利益——いやキモチが一致した好例といえるでしょう。