コンテンツの質を最大限高める

コンテンツづくりの“最後の砦”

雑誌は〈編集者〉がいなければつくれない

雑誌メディアにおける〈編集者〉の役割は、おもに2つあります。ひとつはコンテンツのクォリティ・チェック。

読者に情報が正しく伝わるよう表現されているか。掲載される内容はまちがっていないか。万が一、情報に誤りがあれば、雑誌を回収しなければならない可能性もあるのですから、〈編集者〉の責任は重大です。

もうひとつの役割は、制作プロセスを管理すること。企画を立てたら、どのライターに記事を書いてもらうのか。写真はどのカメラマンに頼むのか。デザイナーはだれにするか。こういった人選も〈編集者〉の仕事です。

また、コンテンツの内容によっては、クライアントや取材先とのやりとりも必要になります。さまざまな人の意向をくみとり、整理し、コンテンツづくりにつなげていく。

与えられたリソースを最大限活かして、コンテンツの価値を高めていくことが〈編集者〉の使命といえます。

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ウェブメディアも〈編集者〉がクォリティと信頼性を高める

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ウェブメディアには〈編集者〉がいない——長いあいだ、そんなふうに言われてきました。そのため、情報の信頼性が怪しいコンテンツ、質の低いものが多く生み出されてきたのも事実です。

これからはウェブメディアにおいても〈編集者〉の存在はますます重要になっていくでしょう。情報の信頼性を確認したり、コンテンツのクォリティをチェックすることが大切なのは、雑誌メディアもウェブメディアも変わらないからです。いや、情報の拡散力・爆発力を鑑みるなら、より責任は重いといえます。

ウェブメディアの制作プロセスにおいても、〈編集者〉には大きな役割が期待されます。取材を的確にセッティングし、ライターやカメラマンを選ぶ。スケジュールを組み、予算を配分する。これらひとつひとつがコンテンツのクォリティに関わってきます。これも雑誌メディアとちがいはありません。

〈編集者〉の存在はユーザーに意識されることはほとんどありません。仕事の内容も一般にあまり知られていないでしょう。まさに縁の下の力持ち。だからこそ、〈編集者〉が力を発揮することで、コンテンツの質は上がり、他のコンテンツと差をつけることが可能になるのです。

私の〈編集〉体験談

これまでの経験でもっとも〈編集力〉が試されたのは、(やや極端な例ですが)おもちゃの雑誌を編集・制作していたときでした。

雑誌に掲載するアイテムは何百点にもおよぶため、その管理も煩雑さを極めます。何十社という玩具メーカーに連絡をとり、リリース資料や画像素材を取り寄せ、送付されてきた素材を整理・管理します。メーカーの担当者とすぐに連絡がつくわけでもなく、素材の送付もメーカーごと担当者ごとにバラバラです。「担当者に連絡をしたか、素材は届いたか、内容は間違っていないか」といった確認もすべてのアイテムに対して厳密に行なわなければならないのです。

もちろん、これらの作業をひとりでこなすことはできません。何人かのスタッフで手分けして行なうことになります。そうなると、スタッフ間での情報共有や作業の分担も大きな課題です。誰がどうやってどのように仕事をするのか。私はそのための仕組みをつくり、ルールを定め、スタッフをディレクションしていきました。

さらに、みずからもメーカーに足を運んで取材をし、ラフコンテを切り、デザイナーに発注し、原稿を書き、校正・校了をするといった一連の作業も同時にこなしました。

いまは当時よりクラウドサービスも発展しているので、より効率的なソリューションがあるかもしれません。ですが、当時はパソコンは用いていたものの、素材は物理的な媒体(MOディスク、ポジ、紙焼き)で受け渡しをしていましたし、原稿の執筆にはワープロ専用機もまだ使われていました。

作業はかなり大変ですが、そのぶん一冊の雑誌ができ上がったときの達成感もひとしおです。いまから振り返ると、おそらくそれはコンテンツというより“モノづくり”の楽しさなのだと思います。手足を使って、ゼロからモノを作り上げていく醍醐味。

ウェブメディアのコンテンツの制作にもそんな喜びを見出したいと思っています。